ヴェルディ作曲「イル・トロヴァトーレ」 Il trovatore(歌詞:イタリア語)vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(14)】
初演:1853年1月19日 ローマ アポッロ劇場

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ

15世紀はじめ スペインのアラゴンとビスカヤ
(ヴェルディは、「幕」という表現をしていないので、ここでも第1部、第2部・・・と表記しています。)
第1部 「決闘」
第1場 アリアファリア城、城門の内部。夜
フェランドや衛兵たちが守りを固めている。アリア「卑しいロマの老女が」にのせてフェランドは、伯爵家の不気味な昔話を始める。「先代の伯爵には2人の息子がいた。ある日、ロマの老婆が弟のゆり籠の近くにいたので、家来たちは不気味がって老婆を火あぶりにした。その灰の中から子どもの遺体が発見され、ゆり籠は空っぽだった」というもの。人々は老婆の祟りと恐れ、先代は悲しみ死んだが、生き残った兄=現ルーナ伯爵は、未だに弟を探しているという。突然真夜中の鐘が鳴るので、みな恐怖におののいて走り去る。
第2場 城内の庭園。夜
暗闇での覗き見のイラスト
レオノーラは庭にたたずみ、吟遊詩人を愛するようになった経緯をアリア「おだやかな夜」にのせて歌う。待ち人が来ないので、彼女は城内に入る。入れ替わりにルーナ伯爵が現れ、彼女への想いを告げようと部屋へ行こうとすると、遠くからリュートの伴奏に合わせて、吟遊詩人マンリーコの歌声が聞こえてくる。喜び庭に出てくるレオノーラ。嫉妬に狂う伯爵。暗闇の中レオノーラは、「愛しい人」と伯爵のもとへ駆け寄る。雲間から出た月で、二人の様子を見たマンリーコは彼女を怒るが、彼女は闇夜の人違いと詫びる。この様子に伯爵は怒り心頭、二人は決闘をするために出ていく。
第2部 「ロマ」
第1場 ビスカヤの山中。夜明け
ロマたちが「アンヴィル・コーラス(鍛冶の合唱)」を歌いながら、鍛冶の仕事に打ち込んでいる。アズチェーナがアリア「炎は燃えて」を歌い、昔ロマの老婆が火あぶりにされたことを物語る。そしてマンリーコに「母親の復讐をしようと伯爵の息子をさらって夢中で火の中に投げ込んだが、気付いてみたらそれは自分の子どもだった」と話す。マンリーコは、自分はいったい誰なのか問うと、アズチェーナは私の子どもだと答える。
手紙のイラスト
そこに伝令が戦況を伝えにやって来て、手紙を手渡す。そこには「マンリーコが決闘で死んだと思ったレオノーラが修道院に入る」と書かれていた。アズチェーナの心配を振り切って、マンリーコは急いで山を下り修道院へと向かう。
第2場 修道院の庭。夜
伯爵は、レオノーラが修道院に入ってしまう前に、彼女を奪い去ろうと待ち伏せしながら、アリア「君が微笑み」で彼女への想いを歌う。そこへレオノーラが登場、侍女たちが別れを惜しんでいるところに伯爵が現れ、彼女を奪おうとする。その瞬間マンリーコが地下から現れた亡霊のように登場し、伯爵に襲い掛かりレオノーラを連れ去る。愛する女性から拒絶された伯爵は、復讐を誓う。
ロマ:以前はジプシーと呼んでいました。

豆知識「トロヴァトーレとは」

日本語では、「吟遊詩人」と訳されることが多いです。騎士文化を背景として、宮廷における十字軍を取り上げた歌を歌いながら各地の宮廷を訪れた、ある程度身分の高い(貴族や王侯出身が多かったようです)者のことを指しているようです。同様の言葉として、フランスなどでは「トルヴェール」、ドイツ・オーストリアなどでは「ミンネゼンガー」と呼ばれます。ワーグナーのオペラ「タンホイザー」は、ミンネゼンガーの物語ですね。
吟遊詩人のイラスト

自選役

このオペラからは、レオノーラ、アズチェーナ、ルーナ伯爵の3役が、静岡国際オペラコンクール二次予選自選役リストに含まれています。

「イル・トロヴァトーレ」の今後の上演案内

藤原歌劇団での公演
・東京文化会館(東京都台東区)
 2022年1月29日、30日
・愛知県芸術劇場(名古屋市東区)
 2022年2月5日
 https://www.jof.or.jp/performance/2201_trovatore/