モーツァルト作曲「フィガロの結婚」 Le nozze di Figaro(歌詞:イタリア語) Vol.2

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(16)】
初演:1786年5月1日 ウィーン ブルク劇場
モーツァルトが台本作家ダ・ポンテと組んだ3つの作品の第1作。

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ(つづき)

第3幕
伯爵は混乱している。そこにスザンナがやってきて、逢引きの約束を取り付ける。喜ぶ伯爵。しかし遠くで、「裁判には勝ったも同然」とフィガロに伝えるスザンナの言葉を聞き、アリア「ため息をついている間に」を歌い、使用人に負けてたまるかと息巻く。
珍妙な裁判が始まる。ドン・クルツィオは「金を払うか結婚か、2つに1つ」との判決を言い渡す。フィガロは、「両親に許可を。私は良家の出身」と訴え、子どもの時にさらわれたことを話す。その話に反応するマルチェッリーナ。実はフィガロは我が子であった。また父親はバルトロ。喜ぶ3人にスザンナも加わり、2組の結婚式を行うこととする。さらに怒り狂う伯爵。
夫人は、アリア「楽しい思い出はどこへ」と昔を思い出す。夫人は頃合いを見計らって、スザンナに伯爵あての逢引の手紙を書かせる。
2組の結婚式。スザンナは密かに伯爵に手紙を渡す。和やかに式は終わる。
第4幕
その夜、邸宅の庭園。フィガロは、逢引き計画を聞かされていないので、疑心暗鬼に陥り、母に慰められている。そこへスザンナが現れ、アリア「さあ早く来て、喜びの一瞬よ」を歌い、フィガロを煽る。
フィガロはアリア「よく目を開けてみろ」を歌い、哀れな男の思いを歌う。
指輪のイラスト
逢引き相手を探して伯爵が現れる。彼は相手にダイヤモンドの指環などを与えるが、人の来る気配がするので、相手を暗闇に逃がし、自分も隠れる。そこへ夫人が現れる。実は彼女は、夫人に変装したスザンナだった。その声で変装に気づいたフィガロは、伯爵が現れるのを見て、夫人(スザンナ)に愛を告白する。怒り心頭の伯爵。皆を呼び出し、不届き者を懲らしめようとするが、自分が与えた指環を持った夫人が現れ、形勢逆転。夫人に許しを請う。皆が喜び、このバカげた婚礼の幕が閉じられる。

自選役

このオペラからは、アルマヴィーヴァ伯爵夫人、スザンナ、アルマヴィーヴァ伯爵、フィガロの4役が、静岡国際オペラコンクール二次予選自選役リストに含まれています。

参考CD

人気のオペラだけに、昔からいろいろな録音が残されています。
参考CD(1)
指揮:エーリヒ・クライバー
フィガロ:チェーザレ・シエピ 他 (1955年録音)
モーツァルト生誕200年である1956年を記念して制作された録音です。ウィーン国立歌劇場を家とする家族が集まって録音したかのような、古き良きウィーンを現しているようなCDで、エーリヒ・クライバー(1890-1956)により、典雅にまとめられています。彼は、200年目のモーツァルトの誕生日(1956年1月27日)に亡くなっています。何かの因縁かもしれません。リーザ・デッラ=カーザ(1919-2012)の気品あふれる伯爵夫人は至芸の極致。録音は古いですが、古さを感じさせない味わい深い録音です。
Kleiber
参考CD(2)
指揮:カール・ベーム
フィガロ:エーリヒ・クンツ 他 (1957年録音)
こちらも「ウィーン国立歌劇場ファミリー」のライヴ録音です。場所は、ザルツブルク。指揮は、カール・ベーム(1894-1981)です。日本ではカラヤンと並んで人気のあったベーム。好々爺然とした写真とは対照的に、演奏にはとても厳しい人だったと伝わっています。歌手はクライバーと勝るとも劣らない強力な布陣。特にクリスタ・ルートヴィヒ(1928-2021)の若々しいケルビーノが印象に残ります。この会場にいたかったと思うのは、先生だけではないはずです。
Bohm
参考CD(3)
指揮:クラウディオ・アバド
フィガロ:ルチオ・ガッロ 他 (1994年録音)
シェリル・ステューダー
シェリル​・ステューダー
(第6回審査委員)
前記2つのCDから約40年後の録音で、歌手陣も国際色豊か。オーストリアの歌手は、ドン・クルツィオのペーター・イェロジッツしかいません。しかし、ウィーンの音は健在。颯爽とフィガロの物語を奏でていきます。第6回コンクールで審査委員を務めたチェリル・ステューダーの伯爵夫人も良いですが、若き伯爵ボイエ・スコウフス(今は、ボー・スコウスフと名乗っています)のフィガロより颯爽としている歌いっぷりが先生は好きです。バルトロにしておくのはもったいないイルデブランド・ダルカンジェロ、他のレコード会社のご厚意で録音に参加したチェチーリア・バルトリのケルビーノ、各国から集まった最高のアンサンブルで「たわけた一日」を描きます。
Bohm