オペラコンクール、参加者募集始まる

2023年1月5日
2023年(令和5年)、いよいよコンクールの年となりました。
今日から、参加者の募集が開始されました。応募は5月1日(月)までです。コンクールの応募について、少し詳しくお話しします。
コンクールに応募するには、いくつかの条件があります。

【応募に関する条件】

(1)年齢

年齢の上限は36歳です。前回第8回(2017年開催)のときは、33歳でした。本来であれば、2020年に第9回コンクールを開催予定でしたが、コロナ禍のため3年の延期を行いました。「2020年に開催していたら出場できる年齢だったのに、延期になったため出場できなくなってしまった。」という歌手が出ないよう、2023年に開催される第9回コンクールのみ、年齢の上限を36歳としました。時々下限に対する質問を受けます。これについては、後からお話ししますね。

(2)国籍

国籍に関する条件はありません。

(3)学歴

問いません。他のコンクールでは、「推薦状」が必要なコンクールもありますが、このコンクールは、どこで学んだか、誰に学んだか、どんなキャリアがあるのか、などで左右されることはありません。

(4)用意する曲の条件

A)予備審査用のアリア2曲
B)第1次予選及び本選で歌う6曲のアリア
C)第2次予選で歌う自選役
※ B)について、第1次予選で必ず歌いたいアリアを1曲(これを第1次予選自選曲と呼びます)、本選で必ず歌いたいアリアを1曲(これを本選自選曲と呼びます)、その2曲以外で得意なアリアを4曲(これを選定曲と呼びます)、合計6曲です。この6曲は、すべて違う曲を選択します。予備審査のアリアとの重複は構いません。しかし、第2次予選の自選役に含まれているアリアは選択できません。時々、「アリアのリストはありますか?」との質問を受けますが、リストの用意はありません。自由に選択することが可能です。ただし、本選はオーケストラ伴奏なので、オーケストラの楽譜の入手が困難な場合は、変更をお願いする場合があります。
*アリアについては、こちらの記事をご覧くださいね。
アリアって何だろう?(オペラコンクールブログ「トリッチ・トラッチ」)
/opera/blog/2021/05/00039/
次に、コンクールの各審査段階についてご紹介します。

【審査】

(1)予備審査

コンクール出場を決めた歌手は、まず自分の得意なアリアを2曲用意します。そのアリアを録音し、応募するときに録音データを提出します。そのアリアを審査委員が聴き、コンクールに出場できる歌手を決めます。提出するデータは、音源のみで映像は必要ありません。これは、審査委員が必要以上の情報を得ることなく、純粋に声のみによって審査をする妨げにならないようにするためです。
第8回コンクールでは、191名の応募があり、予備審査を通過したのは73名でした。予備審査を通過しコンクール出場の意思のある歌手は、この段階で参加料20,000円を納入します。つまり、予備審査までは一切お金はかかりません。

(2)第1次予選

第1次予選では、第1次予選自選曲と、選定曲4曲の中から当日審査委員会が指定する1曲の合計2曲のアリアを、ピアノ伴奏で演奏します。第8回コンクールでは、46名の歌手が第1次予選に参加し、21名が第2次予選へと進みました。
第一次予選
第1次予選の様子

(3)第2次予選

このコンクール最大の特徴であり最大の難関であるのが第2次予選です。歌手は応募する段階で、応募要項にあるオペラの86役の中から、自分の声種にあった1役を選びます。審査委員会は、第2次予選出場日前日に、各歌手に歌ってほしい部分を伝えます。当日歌手は、その部分をピアノ伴奏で一人で歌います。
例えば、プッチーニの「蝶々夫人」というオペラの「蝶々夫人」という役を選んだ歌手は、「蝶々夫人」のパートを一人で歌うのです。オペラは相手役がいたり、合唱が入ったり、多くの部分からなりますが、舞台上には出場歌手とピアノしかいません。オペラ一本が自分の体に染み込んでいて、なおかつ相手役なしに演じ歌う。なかなか高度な審査だと思います。しかし「アリアコンクール」ではなく、「オペラコンクール」と名乗れるゆえんが、この辺りにあるのだと思っています。この点から年齢の下限についてお話しすると、ある程度オペラ出演の経験を積んだ歌手でないと出場は難しいと先生は考えます。
第8回コンクールでは、6名が本選へと進みました。
*自選役については、こちらをご覧ください。
第2次予選 自選役リスト(静岡国際オペラコンクール公式ウェブサイト)
/opera/competition/application/guidelines/list/
第2次予選
第2次予選の様子

(4)本選

本選に進んだ歌手は、本選自選曲と、選定曲4曲の中から審査委員会が指定する1曲の合計2曲を演奏します。本選はオーケストラ伴奏で行うので、当日指定ということはありません。指揮者やオーケストラとのリハーサルを経て本選を迎えます。通常のオペラ公演と同じように、オーケストラはオーケストラピットにスタンバイ。ステージには歌手のみが立ちます。
第8回本選の様子
第8回本選の様子
第8回本選の様子
第8回表彰式の様子

【歌手の強い味方】

(1)公式ピアノ伴奏者

歌手はピアニストを同伴して参加することも可能ですが、コンクールではピアニストの用意があります。もちろん無料です。このピアニストはオペラの伴奏をさせたら日本一のつわものたちが揃っています。いわゆるコレペティトゥアと呼ばれる人たち。ただの伴奏者ではなく、歌唱指導もできるピアニスト。そこら中にいるものではありません。本当に強い味方です。
*コレペティトゥアについては、こちらの記事をご覧くださいね。
オペラのお仕事「コレペティトゥア」とは?(オペラコンクールブログ「トリッチ・トラッチ」)
/opera/blog/2022/02/00103/

(2)指揮者

指揮は、第8回コンクールに続いて、髙橋直史先生にお願いしました。髙橋マエストロは、長年ドイツ・ザクセン州のエルツゲビルデの劇場音楽総監督をしていた方。オペラのエキスパートです。現在は拠点を日本に移し、大阪交響楽団の首席客演指揮者金城学院大学教授を務められています。

(3)オーケストラ

今回も東京交響楽団にお願いしました。新国立劇場のオーケストラを務めるかたわら、ジョナサン・ノットの薫陶を受け、リヒャルト・シュトラウスの強烈なオペラ「サロメ」の好演が記憶に新しいところです。
オーケストラピットのオーケストラ
舞台と観客席の間のオーケストラピットにオーケストラが入り、オーケストラの演奏で本選を行います

(4)宿泊費負担

コンクールでは、浜松に来る歌手の宿泊費、つまりホテルに宿泊する料金を負担します。このようなコンクールはありますが、「ユース・ホステル」的な相部屋ということも少なくないと聞きます。食事代は含みませんが、ちゃんとした個室のご用意があります。立地も最高です。

(5)渡航費補助

海外在住の歌手のため、渡航費の補助があります。税金が含まれていますが、アジア圏は5万円、アジア圏以外は10万円です。なお日本人で海外在住の歌手には、その額の半額の補助をします。

(6)ボランティア

過去に出場した方のインタビューを聴くと、ほとんどの方が精神的な強い味方がボランティアの方々だとおっしゃいます。物心共に温かいおもてなしができるかと思います。
ボランティア
ボランティアの方々が、出場者の皆さんを温かくサポートします