【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(37)】
初演:1875年3月3日 パリ、オペラ・コミック座
主な登場人物
あらすじ
1830年ごろのスペイン。セビリャとその周辺。
第1幕 セビリャのたばこ工場の前の広場
広場にある詰所では、兵隊が日がな一日通行人を眺めている。
広場にある詰所では、兵隊が日がな一日通行人を眺めている。
そこへ、ナヴァラの村娘のミカエラが、許婚のドン・ホセを探しに人混みをかき分け詰所にやってくる。あいにくホセが留守なので、モラレスは暇つぶしにミカエラにちょっかいを出すが、ミカエラは後で来ると言い残し逃げ去る。
兵隊交代の時間になり、モラレスと交代するためホセと上官のスニガが現れる。モラレスから女性の訪問を告げられるホセはそれがミカエラだと気付く。
昼休みが終わり、工場で働く女性たちが戻ってくる。女たちに群がる男たち。男たちのお目当ては、一番人気のカルメン。言い寄る男たちを前にハバネラ「恋は野の鳥」を歌う。群がる男たちをよそに、ホセはカルメンに目もくれない。そこでカルメンはホセに、カシアの花を投げつけ走り去る。
強い衝撃を受けたホセがその花を拾い上げたとき、ミカエラが現れ、彼女から故郷の母からのことづてを聞く。二重唱「母の便りは」。ミカエラは去り、ホセは彼女との結婚を決意する。
その時工場内から、女たちの喧嘩騒ぎが聞こえてきて、カルメンが首謀者として捕まえられてくる。スニガが調べるが、埒が明かずホセが代わると、セギディーリャ「セビリャの砦の近く」を歌い、ホセを誘惑し始める。誘惑に負けたホセは、カルメンを護送中にわざと逃がす。スニガはホセを捕縛する。
第2幕 リリャス・パスティアの居酒屋
喧嘩騒ぎから2ヶ月後。居酒屋は兵隊やロマ*など、いろいろな人であふれている。カルメンたちが「にぎやかな楽の調べ」を歌い、客をもてなす。カルメンに気があるスニガは、ホセが自由の身になったことを告げる。
喧嘩騒ぎから2ヶ月後。居酒屋は兵隊やロマ*など、いろいろな人であふれている。カルメンたちが「にぎやかな楽の調べ」を歌い、客をもてなす。カルメンに気があるスニガは、ホセが自由の身になったことを告げる。
そこへ花形闘牛士のエスカミーリョが、「闘牛士の歌」を歌い登場する。早速カルメンに言い寄るエスカミーリョだが、スルーされ去っていく。
皆が去ると密輸団の密談が始まる。五重唱「儲け話がある」。カルメンも仕事に誘われるが、恋をしているからと断る。
ホセの歌う「アルカラの竜騎兵」が聞こえてくるので、皆はどんな相手か隠れて見ようと去る。カルメンはホセを、歌ったり踊ったりしてもてなす。まもなく帰営の時間になり、ホセが帰ろうとするので、カルメンは私より軍隊をとるのと怒る。ホセはアリア「お前の投げたこの花は(花の歌)」で、彼女への愛を切々と歌う。そんなに愛しているなら、軍隊を捨ててというカルメンに、ホセは「それはできない」と別れを告げ去ろうとする。
そこへスニガが戻ってきて、カルメンといるホセを見つけ喧嘩となる。上官に刃向かってしまったホセは、やむなく軍隊を抜け密輸団の仲間となる。
*ロマ:以前は「ジプシー」と言っていました。
*ロマ:以前は「ジプシー」と言っていました。
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3幕以降は次回お届けします。
3幕以降は次回お届けします。
豆知識「『カルメン』はオペラ・コミック」
「カルメン」はオペラ・コミックです。オペラ・コミックの説明は、下にリンクしたブログ記事をご覧ください。
「オペラの種類(3)~フランス・オペラ~」(オペラコンクールブログ「トリッチ・トラッチ」より)
https://www.suac.ac.jp/opera/blog/2021/07/00060/
https://www.suac.ac.jp/opera/blog/2021/07/00060/
あれ、「カルメン」は喜劇?そこです!実は「カルメン」は「オペラ・コミック座」で初演された数少ない悲劇なのです。主役が死ぬというオペラは「カルメン」が初ではありませんでしたが、とても珍しかったようです。
フランスの作家プロスペル・メリメ(1808-1870)の原作「カルメン」をそのままオペラ化し「オペラ・コミック座」で上演するには大きなハードルがあり、劇場支配人たちは難色を示します。そこで台本作家のアンリ・メイヤック(1831-1897)とリュドヴィク・アレヴィ(1834-1908)の手により、カルメンやホセの性格を穏やかなものにし、一服の清涼剤的役柄のミカエラを追加して、ようやく初演にこぎつけます。
しかし初演時の観客の反応は、「どうしていいかわからない」だったといいます。いつもハッピーエンドの喜劇を観ているので、今日もそのつもりで来たのに、舞台上には「たばこ工場の女」だの、「ロマ」だの、「密輸団」だの、見たことのない人種の人々が出てきて、最後痴話げんかで死人が出るなんて、です。
しかし全くの失敗ではなかったので上演打ち切りにはならず、徐々に人気が出てきました。そんな折、ウィーンでの上演という話が持ち上がり、その上演のためセリフを歌に書き換えてほしいという依頼が舞い込みます。そんな矢先、ビゼーは亡くなり、友人のエルネスト・ギロー(1837-1892)が完成させました。このウィーンでの成功が世界的名作への第一歩となりました。現在では、セリフの入るオペラ・コミック形式の上演と、セリフを歌に書き換えたグラントペラ形式の上演の双方が見られ、録音も様々です。
自選役
このオペラからは、カルメン、ドン・ホセの2役が、静岡国際オペラコンクール第2次予選自選役リストに含まれています。
https://www.suac.ac.jp/opera/competition/application/guidelines/list/
https://www.suac.ac.jp/opera/competition/application/guidelines/list/
「カルメン」の公演
IAWでの上演
四谷区民ホール(新宿区内藤町)
詳しくは、特設ページをご覧ください。
http://carmen2023.com/
関西二期会での上演
吹田市文化会館メイシアター 大ホール(吹田市泉町)
詳しくは、関西二期会・オペラ公演ページをご覧ください。
https://kansai-nikikai.com/publics/index/69/