R.シュトラウス作曲「ナクソス島のアリアドネ」 Ariadne auf Naxos(歌唱ドイツ語) Vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(40)】
初  演:1912年10月25日 シュトゥットガルト宮廷劇場
改訂初演:1916年10月4日 ウィーン宮廷歌劇場

主な登場人物

登場人物一覧

あらすじ(改訂版による)

このオペラは、プロローグとオペラの2部構成となっています。
プロローグ ウィーンにある大金持ちの邸内
音楽教師執事長から、オペラ上演後に歌や踊りの軽いショーが上演されると聞き憤慨するが、執事長は取り付く島もなく去る。音楽教師は弟子の作曲家にどう伝えたらよいか悩む。
作曲家は、下僕たちにあれこれ指示しようとするが、彼らは作曲家のことを芸人としか見ていないので、散々馬鹿にされる。怒れば怒るほど、良いメロディーが頭の中に沸いてくる。
そこへショーを演じるツェルビネッタとその仲間たちが現れる。作曲家は、自分のシリアスなオペラの後にそんなショーが上演されるなんてと憤慨するが、またまた良いメロディーが浮かぶ。
プリマドンナは、あんな連中と一緒にしないでほしいと訴えるが、音楽教師に「あなたの芸術はあいつらとは段違い」となだめられる。ツェルビネッタは、「退屈なオペラの後で、お客を笑わせるのは大変」と嘆くが、舞踏教師のアリエッタ「そんなことはありません」で、「みな美味しい食事で満腹になって、その後の退屈なオペラではみんな寝ているから、あなたのショーでみな起きて拍手喝采」と歌う。
その時、執事長から、シリアスな「ナクソス島のアリアドネ」と軽いショー「浮気なツェルビネッタと四人の恋人たち」同時に上演しろとの重大発表が。ウィーンの大金持ちが、大勢のお客を招いて上演する自宅の劇場に、殺風景な孤島という舞台が耐えられず、少しでも明るく見栄え良くするために、ショーも一緒にやれとのお達し。夜9時には花火をあげるので、それまでに終わらなければならない。全員あきれ果てて文句を言うが、スポンサーの絶対命令には従わざるを得ない。
プリマドンナとテノール歌手は、相手の歌う部分を減らせと言い合い、作曲家はそんなことなら、上演しない方がましだと自暴自棄になるが、「古今の作曲家も、最初の作品を世に出すには相当な苦労があっただろう」、と師匠の音楽教師や、舞踏教師に諭され、今後の生活費のためにも善後策を練り始める
ツェルビネッタが四人の仲間に即興でうまくやってくれるように説明する言葉にカチンと来た作曲家は、ツェルビネッタに抗議するが、彼女の美しさと甘い言葉に誘惑され、すっかりこの上演に乗り気になる。作曲家が「私たちはきっとまた良くなりますよ」と、その報告を音楽教師にしに行ったとき、ツェルビネッタとその仲間たちの舞台衣装姿を見て、「神聖な芸術が汚される、このようなことを許可すべきではなかった」と走り去る。
オペラ 地中海の孤島ナクソス
テセウスからナクソス島に置き去りにされたアリアドネは、毎日悲しみに暮れている。目覚めたアリアドネはテセウスとの思い出に浸る。彼女の前にツェルビネッタとその一行が現れ、彼女を慰めようとするが見向きもされない。
アリアドネは、アリア「すべてのものが清らかな国がある」を歌い、死の使者が現れることを望む。ツェルビネッタは、仲間たちの慰めでは埒が明かないと感じ、超絶技巧の大アリア「偉大なる女王様」を歌い、「男なんてごまんといる、新しい愛を見つけては」と諭すが、歌の途中でアリアドネは洞窟に入ってしまう。なおも「女心も変わるもの」と歌い、仲間たちと楽しく歌い踊る。
そこにバッカス登場が告げられる。バッカスは魔女キルケから逃げてこの島にたどり着いたのだった。出会った二人。アリアドネは死の神の登場かと思い、バッカスはキルケ再来かと思う。アリアドネは死を望み、彼の腕に抱かれる。熱い接吻。アリアドネは、新しい恋に落ちる。ツェルビネッタは、「もう私たちに用はないわね」とつぶやいて去る。

R.シュトラウス

リヒャルト・ストラウスのイラスト
リヒャルト・シュトラウス
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)といいます。ワルツ王ヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)など、音楽家にシュトラウス姓は多いので、「R.」を付けて区別します。ちなみにウィーンのシュトラウス一族とリヒャルト・シュトラウスには血縁関係はありません。R.シュトラウスの略歴については、こちらをご覧くださいね。
「平和の日」Vol.1 (オペラコンクール・ブログ「トリッチ・トラッチ」)
https://www.suac.ac.jp/opera/blog/2023/03/00180/

自選役

このオペラからは、作曲家が、静岡国際オペラコンクール第2次予選自選役リストに含まれています。
https://www.suac.ac.jp/opera/competition/application/guidelines/list/

豆知識「難産のオペラ」

モリエール(1622-1673)の「町人貴族」の劇中劇という形で、1912年演劇とオペラの融合という構想のもと、シュトゥットガルトで初演されました。しかし大変な失敗だったようです。演劇好きからもオペラ好きからも不評。長すぎる上演時間も失敗の原因でした。その後の上演継続のため改訂がなされ、1916年にウィーンで初演され、ようやく成功を収めました。現在「ナクソス島のアリアドネ」といえば、ウィーン初演の方を言います。R.シュトラウスのオペラは、芳醇な大オーケストラが鳴り響く作品が多いですが、これは30数名の奏者による室内楽的な響きが特徴です。
ヴェルディやプッチーニと同じく、R.シュトラウスも台本にはかなり思い入れがあり、長年フーゴー・フォン・ホーフマンスタール(1874-1929)と組んでオペラを創作しました。彼の全15作のオペラのうち6作がこのコンビによります。二人の往復書簡を読むと、こだわりを持った台本制作の様子をうかがい知ることができます。

今後の上演

Opera Buffによる上演
2023年9月16日(土)18時開演、17日(日)14時開演
調布文化会館たづくり くすのきホール
詳しくは、Opera BuffのHPをご覧ください。
https://opera-buff.com/?p=1067
次回、参考CDとその他のお話をしようと思います。