主な登場人物
登場人物相関図
あらすじ(つづき)
18世紀 ノルウェーの海岸地方
第3幕 二艘の船が停泊している入江
港には、灯火の付いたノルウェー船と静まり返ったオランダ船とが停泊している。ノルウェー船の水夫や港町の娘たちが楽しげに歌っている。合唱「舵手よ、見張りをやめよ」。娘たちは食べ物や飲み物を水夫たちにふるまい、隣のオランダ船の水夫たちにもふるまおうとする。しかし、オランダ船の水夫たちは沈黙を続けたまま。からかい半分で水夫たちが声をかけ続けると、突然大波大風がオランダ船に襲い掛かり、オランダ人の水夫は、オランダ人の暗い運命を嘆く歌を歌う。驚くノルウェー船の水夫や娘たちは、彼らに負けまいと歌を歌い続けるが、恐ろしくなって皆隠れる。そのうちオランダ船も静かになる。
港には、灯火の付いたノルウェー船と静まり返ったオランダ船とが停泊している。ノルウェー船の水夫や港町の娘たちが楽しげに歌っている。合唱「舵手よ、見張りをやめよ」。娘たちは食べ物や飲み物を水夫たちにふるまい、隣のオランダ船の水夫たちにもふるまおうとする。しかし、オランダ船の水夫たちは沈黙を続けたまま。からかい半分で水夫たちが声をかけ続けると、突然大波大風がオランダ船に襲い掛かり、オランダ人の水夫は、オランダ人の暗い運命を嘆く歌を歌う。驚くノルウェー船の水夫や娘たちは、彼らに負けまいと歌を歌い続けるが、恐ろしくなって皆隠れる。そのうちオランダ船も静かになる。
その時ゼンタが逃げるように現れ、エリックが後を追ってくる。エリックはゼンタに、「あの日のことを忘れたのか」と歌い、必死にもう一度思い直してほしいと訴える。
その訴えを耳にしたオランダ人は、彼女に裏切られたと絶望し、ゼンタに「自分こそ呪われたさまよえるオランダ人」と告げ、驚く人々を残し船に乗り込み出航する。ゼンタは、エリックが止めるのも聞かず海に突き出た岩に駆け上り、オランダ人への終生の真実の愛を誓って海に身を投げる。と同時に呪われた船は突然海中に沈む。しばらくしてオランダ人とゼンタの体が海中から現れ、呪いは解けて浄化されたかのように二人の魂は天に昇っていく。
衝撃的な結末 または演出家の自己満足
先生が観た衝撃的な結末は、最後ゼンタが焼身自殺するというものでした。観客がみなあっけにとられ、拍手もまばら、激しいブーイングが劇場を襲いました。この公演もさまよっていて、この時6回の公演がありましたが、オランダ人が3人、ダーラントが2人と、公演日によって登場人物が体調不良で変わり、轟々と音だけ鳴らし突き進む指揮者と相まって、何ともふがいない公演でした。ゼンタを歌った歌手のみ絶賛の嵐で、その後世界中の歌劇場でワーグナーを中心に活躍しています。先日テレビ放送された2021年のバイロイト音楽祭での公演では、もはや船すら登場せず、酒場でのやり取りに終始しています。最後、オランダ人は救済を得ることもなく、後ろからマリーに銃で撃たれ絶命します。カーテンコールでは、演出家をはじめとして制作グループに盛大なブーイングが浴びせられたのも納得できるところです。
ワーグナーという沼
ワーグナーの劇場作品はすべて、台本を自ら執筆しています。最初の「妖精」と「恋愛禁制」はあまり上演されることがありません。
次の「リエンツィ」はかのヒトラーが気に入っていた作品で、全5幕の「グラントペラ」です。
4作目である「さまよえるオランダ人」以降の作品が、バイロイトで上演されます。ワーグナーは、ドイツ・バイエルン州の田舎町バイロイトに、自分のオペラだけを上演する祝祭歌劇場を建設しました。夏にワーグナーの作品のみを上演する歌劇場で、世界中の「ワグネリアン」と呼ばれるワーグナーファンには聖地のような存在です。先生もいつか行ってみたいです。
「タンホイザー」、「ローエングリン」。ここまではオペラと呼んでいますが、それ以降は「楽劇(Musikdrama)」とよんで区別しました。「トリスタンとイゾルデ」、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。続く「ニーベルングの指環」は4部作からなり、序夜「ラインの黄金」、第1夜「ワルキューレ」、第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」と続きます。
最後の「パルジファル」は、舞台神聖祝典劇(Bühnenweihfestspiel)と呼びました。
「ニーベルングの指環」を1つの作品として数えると、10作品。数としては、あまり多くはありませんが、初期の作品を除けば「ハズレ」はありません。
ワーグナーの作品は、その上演時間の長さも話題になります。「さまよえるオランダ人」と「ラインの黄金」が比較的短くて2時間台、長いものでは5時間以上かかります。「ニーベルングの指環」は4部作なので4晩かかります。CDですと、概ね14枚です。17時間はかかります。体力が必要です。でもいったんその魅力に取りつかれると、とんでもないことになります。沼は深いのです。あなたは、沼にはまってみますか?先生は、付かず離れずの関係で、ワーグナーと付き合っています。
参考CD
ブログ記事「さまよえるオランダ人 Vol.1」で書いたように、いろいろな版によるCDが存在します。大きな違い以外は明記がないので、間違い探しみたいなことも楽しみの1つです。
参考CD(1)
指揮:オットー・クレンペラー
オランダ人:テオ・アダム 他(1968年録音)
オランダ人:テオ・アダム 他(1968年録音)
オランダ人のテオ・アダム(1926-2019)と、ゼンタのアニヤ・シリアのコンビがとても素晴らしく、それを支えるオットー・クレンペラー(1885-1973)の指揮も質実剛健といったところ。3つの幕をそれぞれ独立させています。特筆すべきは、序曲と終幕の終結部を、クレンペラーの編曲と思われる独自の楽譜を用いているところです。
参考CD(2)
指揮:カール・ベーム
オランダ人:トーマス・スチュアート 他(1971年録音)
オランダ人:トーマス・スチュアート 他(1971年録音)
先程ご紹介した、ワーグナーの聖地バイロイトでの録音です。3つの幕を続けて演奏しています。カール・リッダーブッシュ(1932-1997)のあたたかい声が先生は好きです。指揮のカール・ベーム(1894-1981)は、大変人気のあったオーストリアの指揮者で、1963年の初来日から亡くなる前年の1980年の最後の来日公演まで、4度来日しています。日本人から絶大な人気を博した指揮者でした。もっとも模範的な演奏といっても過言ではありません。
参考CD(3)
指揮:ダニエル・バレンボイム
オランダ人:ファルク・シュトゥルックマン 他(2001年録音)
オランダ人:ファルク・シュトゥルックマン 他(2001年録音)
アルゼンチン生まれのダニエル・バレンボイムは、天才ピアノ少年としてデビューし、1954年には、かの20世紀を代表する大指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)に「天才だ!」と言わしめたとか。20代半ばからは指揮者としても活躍します。1992年からベルリン国立歌劇場の音楽総監督を務め、ワーグナーの演奏には定評があります。3幕続けてのこの録音は、初版の終結部が演奏され、ゼンタのバラードもイ長調で演奏されています。もう少しゼンタが良ければ、完璧なCDです。
参考CD(4)
指揮:ブルーノ・ヴァイル
オランダ人:テリエ・ステンスフォルト 他(2004年録音)
オランダ人:テリエ・ステンスフォルト 他(2004年録音)
これは、ワーグナーが最初に1841年に書き上げた「さまよえるオランダ人」を音にした初の録音です。場面はスコットランド。名前もダーラントではなくドナルド、エリックではなくジョージ(歌うときはドイツ語風に「ゲオルク」と発音されています)と戻されています。オーケストラも1840年代当時使われていたのと同じ機能を持った楽器を使用しています。その他、いろいろなところが違うので、聴いていて「あれっ?」と思うところが多々あります。