教育・研究

2023年08月30日

『鬼滅の刃』を題材とした特別講義を行いました

全学科目「文学」(担当:二本松康宏教授)にて、久保華誉さんをゲスト講師にお招きした特別講義が行われました。
久保さんは國學院大學大学院で伝承文学研究に取り組み、野村純一名誉教授に師事。2023年3月に『なぜ炭治郎は鬼の死を悼むのか―昔話で読み解く「鬼滅の刃」の謎』(草思社)を刊行されています。今回の特別講義では、人気アニメ『鬼滅の刃』を題材として、その設定やエピソードに見え隠れする「昔話」について講義いただきました。
ゲスト講師の久保華誉さん

『鬼滅の刃』は昔話の宝庫だという久保さん。世の中で多くの人に読まれる優れた物語のテーマは「行って帰ってくる」物語で、日本の昔話の代表作「桃太郎」やトールキンによる長編小説「指輪物語」などが挙げられます。「鬼滅の刃」では、鬼になってしまった主人公の妹を人間に戻して家に帰るまでの物語だといえます。

「鬼滅の刃」を日本の昔話の視点から読み解くとき、昔話のエッセンスがたくさん詰まっていることに気づきます。

例えば、『鬼滅の刃』でも一番のテーマとなっている「鬼退治」は、多くの昔話や伝説で扱われています。最も有名なのは室町時代から現代まで伝わる「酒呑童子(しゅてんどうじ)」の話で、美術館所蔵の絵巻にも表されています。「酒呑童子」と『鬼滅の刃』の共通点は、鬼になったいきさつが語られるという事、首を切られたからと言ってすぐには死なないことなどが挙げられます。こうした『鬼滅の刃』の鬼につながる話は、全国に散見されます。

また『鬼滅の刃』の登場人物の名前や能力には、日本の昔話だけでなく世界の伝説や神話との重なりが見られます。
たとえばギリシャ神話の主神ゼウスは、雷を操り、菅原道真公は、雷神となって政敵を落雷で懲らしめます。源頼光(頼光は「らいこう(雷光、雷公)」とも読む)が酒呑童子退治に使ったとされる太刀は「鬼切丸」と呼ばれ、菅原道真公が祀られる北野天満宮に収められています。雷は、神の領域であり、悪いものを祓う力があると考えられていました。
京都市にある護王神社は「いのしし神社」と呼ばれ、神の使いとして猪が祀られています。ヨーロッパでは、獣に育てられた治世者や英雄の伝説や神話が残されています。ローマのサッカーチームのエンブレムは、牝オオカミとその乳を飲んでいる子どもたちで、長じてローマを建国したという話に因んでいます。
ゲスト講師の久保華誉さん
久保華誉さん
日本で愛されている話型を使いながら、老若男女に見られる人気漫画、アニメになった『鬼滅の刃』。今回の講義では昔話から見る現代作品の面白さを学ぶことが出来ました。

発行部署:企画室