在学生・卒業生の声Voices
家具デザインから建築の世界へ
すべての出会いと経験が自分の力に
企業組合 針谷建築事務所 理事・設計室長、一級建築士

浜松市に生まれ、育ちました。小学校の頃から真剣に陸上に取り組み、大会でも成績を残していたので、陸上の指導教員や教員だった祖父の薦めもあって陸上が盛んな磐田市の高校に進学しました。高校3年の11月まで大会に出場し、やっと大学進路を考えようと担任教員に相談したら、「(鈴木さんは)絵を描くのが得意だし、浜松市に新しく出来るSUACなら好きなことが出来るのでは。海外に行ってみるのもいいよ」というアドバイス(この言葉がその先、大きな影響を与えることになるのですが)。短い準備期間でしたが急いでデッサンを学び、デザイン学部生産造形学科(当時)に入学しました。
入学してから気づいたのは、周囲の人たちの技術の高さ。 デッサンの授業で、同級生の作品に驚きました。自分の表現したいことを実現するためには技術が必要だと思い、仲山進作教授(当時)に相談。浜松市内の美術家の方をご紹介いただき、アトリエに通ってさらに学びを深めました。木彫にも取り組み、2年次の夏には岐阜の山奥に1か月滞在して大きな作品を制作したことも。学内では組立アトリエでひたすら自分の表現したい作品制作に打ち込んでいました。高校まで陸上で表現していた自分の気持ちを、どうやって作品に落とし込んでいけばいいのか、模索していたのだと思います。
一方で高校の担任教員に言われた「海外」というキーワード には「イタリアに行く」という目標を掲げ、文化政策学部の高田和文教授(当時)に相談して、在学中は密かにイタリア語を勉強。2年次にイタリアを初めて訪れたときには本場の芸術作品に圧倒され、帰国後は真面目に授業を受けるようになりましたね(笑)
4年間イタリア語を学び続けた甲斐があり、卒業時には問題なく話せるように。卒業後はイタリア・ミラノ工科大学に進学しました。イタリアでは文化的背景をふまえた、総合的な視野からデザインしていきます。所属した修士課程では家具や照明計画などを学び、修了後はイタリア国内で働きました。4年半在住したイタリアを離れ、静岡のインテリア家具メーカーで勤めていたとき、家具を設計する上でそれをしつらえる空間や建築のことも考えたいと一念発起。退職して専門学校に通い、建築士の資格を取得しました。
現在の職場に勤めて11年目。母校である高校の校舎新築設計を担当したことは、自分が経てきた道を振り返るきっか けとなりました。設計の際に大切にしているのはSUACでのデザイン基礎やイタリアで学んだ「背景を大切にする」ということ。地理的背景や歴史などを調べていくと、おのずと必要な条件や本質が見えてきます。自分の目指すべきものを定めてひたすらに“走って”きたこれまでのキャリアですが、いつも的確なアドバイスと励ましをくれる人たちとの出会いに恵まれていました。まだまだ広がっていく興味関心を、将来の建築設計にどのように活かしていこうかとわくわくしています。