イベントレポート

2024年07月09日

文化政策学科 舩戸ゼミ「卒業生×在学生」シンポジウム:「社会調査士」資格とキャリアデザイン

舩戸ゼミシンポジウムの会場の様子

文化政策学科 舩戸ゼミでは、「『社会調査士』資格とキャリアデザイン」をテーマに、資格を取得して社会で活躍する卒業生を招き、キャリアデザインと社会調査の可能性を考えるシンポジウムを開催しました。

「社会調査士」とは、社会調査に関する能力を有すると認められる者に対して一般社団法人社会調査協会が付与する資格です。この資格を得るためには、この協会からカリキュラム認定を受けている大学において指定された科目単位を取得する必要があります。本学の文化政策学科では、2015年度からこの資格を取得できるようになりました。

本シンポジウムでは、在学中に地域社会において量的・質的調査に取り組み「社会調査士」資格を取得した舩戸ゼミの卒業生や、現在資格取得カリキュラムを履修している在学生が登壇。卒業後の「社会調査士」資格の活かし方について、社会調査の経験や能力を地域での活動や就職活動・就職後、どのように活かしたのかについて報告してもらいました。

鈴木義人さん(中日新聞記者、2023年卒業)は、舩戸ゼミで取り組んだ限界集落における「聞き取り調査」、地域の祭礼やイベントにおける「参与観察」、棚田で米作りによって地域に通い続けて住民との関係性を築くことで、地域の課題を発見し、地域の人とともに解決策を考えた経験を説明。現在の記者としての仕事でも、取材地域に実際に行って感じること、自らが参加すること、そこから帰って考えることを実践しているといい、「社会調査士」資格によって見聞きしたことを持ち帰り、考える力がついたと語りました。

中野七海さん(日本放送協会(NHK)記者、2021年卒業)も地域の話題、防災などについて取材するなかで、「取材はフィールドワークに似ている」と感じているそう。全国転勤のある立場として「よそ者」視点で地域を見ることで、地域の課題や良さを発信します。社会調査のキーワードである「ラポール(信頼関係)形成」は報道取材でも大切で、限られた時間の中で取材相手にどこまで近づけるか、本音を引き出すかがカギとなるといいます。
シンポジウムで登壇する鈴木さん
シンポジウムに登壇する八木さん
シンポジウムに登壇する植田さん
八木彩樺さん(静岡新聞社・静岡放送 営業職、2023年卒業)は、現在新卒・転職のキャリア支援事業を担当。お客様の持つ課題を引出し、解決策を示すというプロセスにおいて、在学中の経験が活かされているといいます。
「地域に何度も足を運び、人々の話を聞き、 現状を自分の目で見て考えることの大切さ」を学んだ在学中。その経験をとおして、地域の課題を解決するために、アイデアを形にして地域の方々に直接力になれる営業職を志望しました。お客様の本音を聞くことができるのは、関係性次第。そこにも「ラポール形成」が活かされています。
在学生の立場から話した植田勝也さん(文化政策学部4年)は、卒業生と同様に「久留女木の棚田」での稲作に取り組みながら、米作りをきっかけとして地域の人たちと交流しています。
米作り以外でも地域の協議会や会合への参加、地域の祭典、イベントへの参画など、積極的に地域に携わっていくことで「参与観察」をおこなっています。地域住民といっても様々な立場や考えを持つ人がおり、会話する相手に合わせてキャラクターを変化させる(役割演技)ことで、ラポール形成をはかっているそう。最近は積極的に地域のイベントにかかわっていくことで、「参与」から「参加」へと立場も変化しています。
シンポジウムのパネルディスカッションの様子

後半のディスカッションでは、聴衆からの質疑応答に登壇者が回答しました。
「稲作や限界集落における聞き取り調査、参与観察など、大変なこともあると思うが、取り組む際に心理的な壁はなかったか」という質問には、「面白そうだ、という思いが大きかったし、大学生で何かやってみたいという気持ちがあった。ゼミの活動は大変だったけど、一緒に頑張れるゼミの仲間がいたので乗り越えられた」と八木さん。舩戸教授は「『これをやったら何の役に立つか』ではなく、まずやってみることが大事。あとからどんな意味があったのかに気づく。どこかで何かの役に立っているはず」と補足しました。

記者をしている卒業生への質問では、「地域活性化が課題の中、地域外の人に発信する上で気を付けていること」を問われると、鈴木さんは「客観的なデータを入れること、また第三者のコメントや意見を入れることを心掛けている。自分が常に俯瞰的にみることも大事」。中野さんからは「まずは地域の人の話を聞くこと。記者が課題を決めるのではなく住民から引き出すこと。課題だけでなく、自分が知っている地域のいいところ、いい場面を盛り込むこと。報道を見た視聴者が「大変だよね」という感想だけにならないように気を付けている」と答えました。

登壇者の卒業生、在学生のプレゼンテーションを通し、社会調査のスキル、能力が、在学中そして卒業後の職業にどのように生かされているのかが具体的にみえてきたシンポジウムとなりました。 資格取得が目的ではなく、手段として有効に活用していくために、今後も社会調査の可能性や「社会調査士」資格取得の有効性を考えていきます。

文化政策学科 舩戸ゼミ「卒業生×在学生」シンポジウム
「社会調査士」資格とキャリアデザイン 社会調査の可能性を考える

文化政策学科 舩戸ゼミ「卒業生×在学生」シンポジウムチラシ
【日時】2024年7月3日(水曜日)
    4限(午後2時40分から午後4時10分)
      5限(午後4時20分から午後5時50分)
【会場】静岡文化芸術大学 北棟 233小講義室
【参加料】無料(申込不要)

発行部署:企画室