教育・研究

2024年05月29日

多文化共生のための「やさしい日本語」を題材とした特別講義を行いました

文化政策学部科目「多文化共生論」(担当:佐伯康考准教授)にて、磐田市自治デザイン課ダイバーシティ推進室の職員を講師にお招きしたゲスト講義が行われました。

天竜川をはさんで浜松市の東に位置する磐田市は、県内で3番目に外国人人口が多い市。ブラジルをはじめ、フィリピンなどのアジア各国から来日した市民が暮らしています。今回の講義では「やさしい日本語」をテーマとして、磐田市が取り組む多文化共生事業についての講義と演習をおこないました。

日本国内の外国人就労制度

「外国人技能実習制度」は、1993年(平成5年)に創設された制度で、国際貢献のため開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転するもの。2023年末時点で、技能実習生は、全国に約40万人在留しています。職種別では建設関係が最も多く、次いで食品製造関係、機械・金属関係で就労しています。
一方、「特定技能制度」は国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるもの。2018年(平成30年)に可決・成立した改正出入国管理法により在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが可能となりました。「特定技能1号」の在留期間は上限5年までと定められていますが、さらに熟練した技能を有する「特定技能2号」では在留期間の上限がなく、家族の帯同も認められます。

これまで、不適正な送出し機関の存在や不十分な実習体制や実習生の保護体制など課題があったことから、管理監督体制を強化と技能実習生の保護等を図るため、技能実習に代わる新制度「育成就労」を新設する出入国管理法などの改正案が2024年3月15日に閣議決定されています。

磐田市の多文化共生への取り組み

「磐田市版やさしい日本語ガイドブック」の表紙

磐田市では自治市民部自治デザイン課ダイバーシティ推進室を設置。多様な方々が自分らしく生きられるまちを目指し、多文化共生、男女共同参画、性の多様性など、ダイバーシティ推進、社会教育、子ども若者健全育成など幅広く取り組んでいます。

その中で取り組んでいる「やさしい日本語」は、普段使われている言葉を、外国人にも分かるように配慮した簡単な日本語のこと。磐田市では外国人に限らず、こども、高齢者、障がいを持った人など、様々な人に配慮したことばとして、市民への普及を目指しています。
本講義では磐田市が制作した「磐田市版やさしい日本語ガイドブック」を素材に、「やさしい日本語」への理解を進め、例題を通した実践をおこないました。
講師の森さん(磐田市ダイバーシティ推進室)は、「やさしい日本語を使ってコミュニケーションをとろうと思う気持ちが大事」と説明。学生たちは「やさしい日本語」の作り方として、ステップ1「情報の整理」、ステップ2「簡単な言葉への言い換え」、ステップ3「明確に伝える」までを順番に理解すると、実際の行政文書の例文をもとに「やさしい日本語」への言い換えに挑戦しました。
「やさしい日本語」を説明する森さん
演習課題に取り組む学生たち
森さんは最後に、便利なツールとして翻訳アプリケーションを紹介。精度や使いやすさを比べながら、活用していく方法もあります。
浜松市をはじめ近隣自治体で日本語学習指導のサポーターとして参加する学生、日本語教員養成課程を履修する学生など、普段から多文化共生に興味を持つ学生だけでなく、市民として社会で暮らす私たちにとって「やさしい日本語」への理解は重要だと感じた講義となりました。
ガイドブックを手に集合写真に写る学生たち

発行部署:企画室