教育・研究
2024年07月26日
中日新聞・静岡新聞の編集局長によるトークセッションがおこなわれました
全学科目「特別共同授業C(メディアとしての新聞/社)」(担当:加藤裕治教授)は、中日新聞(東海本社)と静岡新聞、本学の三者にて、2020年より共同連携授業として開講しています。今回、両社の編集局長を迎え、現在の情報社会、ジャーナリズムのあり方、地域と新聞の関係などについて、議論するトークセッションを開催しました。
登壇したのは、池田千晶さん(中日新聞東海本社編集局長)と石川善太郎さん(静岡新聞編集局長)。はじめにお二人からそれぞれご講演をいただきました。新聞からバランスよく情報を得てほしい
池田さんはちょうど平成へと時代が移り変わるときに新聞社へ就職。平成元年(1989年)は天安門事件やベルリンの壁崩壊、そして東西冷戦の終結と国際的に転換点の年でした。「新聞は老若男女問わず、あらゆる職業の方、趣味の如何にかかわらず、どんな人にとっても平均的に情報を伝えるメディア」と池田さん。池田さんが子どものときは、国民が楽しむエンターテインメントやメディアに多様性があまりなく、皆が同じ方向を向いている時代でした。平成時代に入り、様々なコンテンツが登場し、メディアとしてもそれらをカバーしなければならなくなりました。
現在はネット社会。一人一人が自分の欲しいと思う情報だけを見てしまう傾向があります。新聞はあらゆる情報がバランスよく載っている、いわゆる「健康食」。新聞をめくって、様々な記事に出会ってほしいと語りました。
現在はネット社会。一人一人が自分の欲しいと思う情報だけを見てしまう傾向があります。新聞はあらゆる情報がバランスよく載っている、いわゆる「健康食」。新聞をめくって、様々な記事に出会ってほしいと語りました。
若い世代の発想でこれからの新聞を
石川さんが入社した当時、新聞印刷ではまだ鉛の活字を使っていました。段々とコンピュータによる紙面製作システムへの移行していく時期だったといいます。現在も新聞の変革期を迎えているという石川さん。例えば、電車や新幹線でも新聞紙を広げているビジネスマンはほとんど見なくなりました。10年前にはよく見た景色がなくなっているのです。さらにChatGPTの開発、普及はメディアにも大きな影響を与えています。情報を得る読者側もフェイクニュースに注意しなければなりません。
静岡新聞社でもデジタル化が急務。2023年の夕刊廃止にともないデジタル版を開始。デスク体制も再編して模索を続ける最中だと言います。新聞を読む習慣がない若い世代も多い中、新しい発想でジャーナリズムを発展させていってほしいと締めくくりました。
静岡新聞社でもデジタル化が急務。2023年の夕刊廃止にともないデジタル版を開始。デスク体制も再編して模索を続ける最中だと言います。新聞を読む習慣がない若い世代も多い中、新しい発想でジャーナリズムを発展させていってほしいと締めくくりました。
トークセッション
後半では「これまでの新聞、これからの新聞」をテーマに、加藤教授の進行で両編集局長のトークセッションをおこないました。
はじめに、新聞の現場を体験してきたお二人に対して、最近の状況や新聞製作はどのように変わっているのかと質問。
石川さんは「若い社員たちはネットの使い方が上手。取材ルートを見つける手法でも、インターネットを活用して情報を見つけ出したり、人のつながりから得たりしている」。中日新聞・池田さんも「インターネットが普及したことが大きい」と指摘。最初は手書きだった記事もワープロになり、ファックスでやり取りしていたそう。写真も今はデジタルですが、当時はフィルムで現像。電送機で本社に送っていたので、とにかく時間がかかりました。さらに「取材手法では、対象がどのような人なのかまず検索して、下準備ができる。昔は図書館で資料を探したこともあるし、ほとんど初対面で情報を引き出していた。人に会って記事を書くという工程は変わっていない」と述べられました。
石川さんは「正攻法の取材」も大切とし、必要な情報を取材するため、時には踏み込んでこそ伝えられることがあると。一般からのネガティブな反応もあるが、それにより事件の重みが伝わることもあります。デジタルの時代になっても変わらないことは「当事者とどのように信頼関係を作り、掘り下げていくか」であると語りました。
この後も、「インターネットと新聞」の取り組みや自治体との連携、地方紙における支局の存在など、現在の情報発信についての幅広い議論が繰り広げられました。
最後に受講学生からの質疑では、「新聞における情報のアーカイブ化」「新聞紙のちがう形は考えているか」「他社紙をどのように見ているか」などが挙げられ、両編集局長からは今後の新聞のあり方や他国での取り組みなども例に挙げながら、丁寧に答えていただきました。
最後に受講学生からの質疑では、「新聞における情報のアーカイブ化」「新聞紙のちがう形は考えているか」「他社紙をどのように見ているか」などが挙げられ、両編集局長からは今後の新聞のあり方や他国での取り組みなども例に挙げながら、丁寧に答えていただきました。
発行部署:企画室