教員紹介

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永井 敦子NAGAI Atsuko

教授

  • 文化政策学部 国際文化学科
キーワード:
フランス近世史、都市、文化、ポリス(治安行政)、ルーアン
学歴 北海道大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学(1996年)
学位 修士(文学)(北海道大学、1993年)
経歴
  • 日本学術振興会特別研究員(1996年から1998年)
  • 静岡文化芸術大学講師(2004年)、准教授(2007年)、教授(2014年から)
担当授業分野 西欧・北米文化論、西欧近現代史 
研究分野 フランス近世都市史
研究テーマ 近世(近代初期)における都市の新たな秩序の形成過程と、その中での祝祭の機能
研究業績 著書
  • 『十六世紀ルーアンにおける祝祭と治安行政』(単著、論創社、2011年)
  • 『国際文化学への第一歩』(共著、静岡文化芸術大学文化政策学部国際文化学科編、すずさわ書店、2013年)
論文・解説
  • 「1540年ルーアンの謝肉祭」(『北大史学』34号、1994年)
  • 「16世紀ルーアンにおける総行列」(『西洋史論集』2号、1999年)
  • 「16世紀ルーアンにおけるテ・デウム」(『西洋史学』197号、2000年)
  • 「16世紀ルーアンの都市行政に関する1考察」(『北大史学』41号、2001年)
  • 「16世紀ルーアンの都市防衛体制に見る治安行政と祝祭」(『歴史学研究』813号、2006年)
  • 紹介:近代フランス(『史学雑誌 2009年の歴史学界-回顧と展望-』119-5、2010年)
  • 「『泉の書』(1526年)に描かれたルーアン」(『静岡文化芸術大学研究紀要』第14巻、2014年)
  • 「15世紀末から16世紀までのフランスにおける治安行政:policeの用語法から」(『静岡文化芸術大学研究紀要』第17巻、2017年)
  • 「15世紀末から16世紀までのフランスにおける治安行政(続):policeの対象範囲と担い手」(『静岡文化芸術大学研究紀要』第19巻、2019年)
  • 「16世紀フランスにおける治安令:武装と浮浪の取り締まりを中心に」(『静岡文化芸術大学研究紀要』第22巻、2022年)
所属学会・団体 史学会、北大史学会、比較都市史研究会

メッセージ

私の専門領域は、近世フランス史、最も狭くは16世紀にルーアンという都市で挙行されていた祝祭の記録文書と同時期の都市行政文書を解読することです。祝祭にはカーニヴァルなど愉快なもの、国王を迎える入市式、宗教的なパレードもあります。当時、都市の支配層が祝祭の挙行に熱心であった理由は、都市の住民構成を知るためにパレードに並ばせるのが最も有効な方法だったから、というのが私の1つの仮説です。都市民を管理するための住民台帳などがなかった時代のことです。こういった研究から、近世フランスの国制、日常生活、世界観へと視野を広げたいと思っています。
歴史学という研究領域は「人文科学」にくくられます。また大学教育のなかでの歴史学は「教養教育」の一環と位置づけられます。大学教育において「実践的」や「実務型」が求められる昨今、「人文・教養」分野の担い手としては、担当分野の存在意義を明示する必要に迫られていると、ときどき感じますので、あえて主張するならば、「人文・教養」は広い視野と柔軟な発想を得るための学びです。例えば数百年のスパンで歴史を見ると、いま共有されている「常識」が、数百年を経てどのように形成されてきたのか、どのように崩壊しかかっているのか、広い視野で考えることができます。いまの「常識」が通用しない過去の世界を想像することは、異なる価値観を柔軟に受け入れ、斬新な発想をすることにつながります。異世界を覗くことはまた、現実世界からの逃避であると同時に、現実世界で受けたプレッシャーやダメージを跳ね返すレジリエンスの源でもあります。しかし「それは何の役に立つのか?」という、近代功利主義にとらわれた見方から離れてみれば、歴史学研究は私にとっての道楽です。