教員紹介

塩見 佳也 准教授写真

塩見 佳也SHIOMI Yoshinari

准教授

  • 文化政策学部 文化政策学科
  • 大学院 文化政策研究科
キーワード:
営業の自由、カール・シュミット、都市再生・地方創生
出身地 岡山市
学歴 九州大学大学院法学府博士後期課程単位取得退学
学位 修士(法学)(九州大学、2002年)
経歴
  • 九州大学法学研究院助手(助教)(2006年から2008年)
  • 九州大学法学研究院研究員(2008年から2018年)
  • 東海大学現代教養センター(スチューデント・アチーブメント・センター)准教授(2018年から2022年)
  • 静岡文化芸術大学准教授(2022年から)
担当授業分野 行政法、憲法、情報法
研究分野 国法学
研究テーマ 経済的自由権、ドイツ国法学(カール・シュミットを中心とする)、市場秩序と法規制の関係、都市法
研究業績 著書
  • 粟屋剛・山下登・宍戸圭介・加藤穣 編著『生命倫理学講義スライドノート/医療と法 第3版』所収「人間の尊厳」、「法学の基礎」(ふくろう出版、2015年)ISBN: 9784861866739
  • 林田幸広・土屋明広・小佐井良太・宇都羲和編著『作動する法/社会』所収「『営業の自由』に対する行政規制における情報の機能」(ナカニシヤ出版、2021年)ISBN: 9784779515286
  • 小林直三・大江一平・薄井信行編『判例で学ぶ憲法』所収「平和主義と安全保障」、「内閣と地方自治」、「経済的自由権」(法律文化社、2022年)ISBN: 9784589042057
  • 重松博之・高橋洋城・中山竜一・吉岡剛彦編著『法の理念と現実』所収「中央銀行・貨幣・仮想通貨と多層的憲法秩序ー経済的自由権に関するドイツ『私法社会』論からの示唆ー」(成文堂、2024)ISBN:9784792307370
論文・解説
  • 「初期カール・シュミットの法適用論―『法律と判決』(1912)を素材として―」(単著、『九大法学』89号、九大法学編集委員会編、2004年)
  • 「カール・シュミットにおける政治・法の区分論―「法律の一般性」要件論を軸に―」(単著、九州大学大学院法学府・同博士後期課程単位取得認定及び助手任用審査論文、2005年)
  • 「カール・シュミットの公法学における「サヴィニーの実証主義」」(単著、『法政研究』76巻3号、九州大学法政学会編、2006年)
  • 「空知太神社公有地無償使用住民訴訟 最高裁大法廷判決平成22年1月20日民集64巻1号1頁」(単著、『法政研究』78巻2号、九州大学法政学会、2011年)
  • 「中国『優生優育』政策」(共著:于令零、塩見佳也、加藤穣、宍戸圭介、池澤淳子、粟屋剛、『生命倫理』Vol.24No.1、日本生命倫理学会、2013年)
  • 「機能性表示食品制度によるガバナンスと公法学の役割-食品表示法関連諸法をめぐって-」(共著:塩見佳也、守川耕平、『兵庫大学論集』21号、兵庫大学、2016年)
  • 「植物発酵食品『天生酵素』のラット胃炎・胃潰瘍モデルに対する効果―補完食品的利用の可能性を探る―」(共著:守川耕平、中西雅寛、塩見佳也、岡野哲郎、『東海学院大学研究年報(4)』東海学院大学、2019年)
  • 「「憲法問題」としての金融危機~緊急事態条項をめぐる憲法改正の動向とカール・シュミットの「憲法破棄」論」(単著、『IISIAマンスリー・レポート』2021年5月号、株式会社原田武夫国際戦略情報研究所編、2021年)
翻訳
  • (三島淑臣監訳)ノルベルト・ブリースコルン著「法服従」、『法の理論22』(成文堂、2003年)、ISBN: 9784792303600
  • (古賀敬太、佐野誠監訳)アゴスティノ・カリーノ著「カール・シュミットとヨーロッパ法学」、シャンタル・ムフ編著『カール・シュミットの挑戦』(風行社、2006年)ISBN: 9784938662851
所属学会・団体 日本公法学会、日本法哲学会、日本生命倫理学会、地域デザイン学会

メッセージ

法と政策

憲法、民法、行政法などの基本概念は、法律を読み解く「文法」としてだけでなく、政策を法律や条例に実装するための知見としても重要です。法律学(法解釈学)と法政策学は、従来別々の領域とされてきました。しかし、実際には多くの政策が法律として実現され、行政処分や刑事罰などの規制手段は、裁判所の司法審査により適法性・合憲性が評価され、また、政策の実施には、強制手段だけでなく、契約的手法や経済的インセンティブ、情報による誘導など多様な手段が用いられ、法と政策論の融合が進んでいます。

公法と私法

私は、憲法学と行政法学を研究しています(営業の自由、財産権、公民連携)。憲法学は国家と個人や社会の法関係を統治機構と基本権の観点から研究し、行政法学は法規制、行政訴訟、行政組織、公有財産の法的構造を研究します。これらは従来、公法の専属領域とされてきましたが、現代では公共政策の展開において民法などの財産法との関連が強くなっています。例えば、空き家・空地による土地の過少利用問題については、空き家法と行政代執行法、所有者不明土地法と収用法、所有不明・管理不全土地建物の管理権限を巡る民法の改正を俯瞰し、これらの個別法令と財産権保障(憲法29条)との関係を考察する必要があります。公共施設のPFI事業では、法律で定められたコンセッションによる収益(物権)にたいする抵当権設定によるファイナンス手法のほかに、債権法に由来するプロジェクトファイナンス固有の法技術が行政契約として実装されるため、これらを、公物法の観点から検討する必要があります。また、公共施設は市民にとっての表現の場でもあることから、公共施設をめぐる公共政策については、憲法理論の観点も重要な関連性をもちます。

法と文化

私は、19世紀後半からワイマール崩壊期のドイツ法を研究してきました。社会の変化速度の加速化と制度との不整合による予測不能性の増大という点で、現代との類似性を感じます。歴史の廃墟を前に、法律学者たちは、共和制ローマ以降の気の遠くなるような時間的連続性を保持してきた西洋の文化的要素が、共通の法解釈や制度構築の手がかりを提供し、個人の権利保護や取引の安定、予測可能性の確保に寄与すると主張してきました。我が国は明治時代以降西洋法との影響・対決のなかで固有の法システムを形成してきたので、長く過酷な歴史の試練にたえぬき法制度のあちこちに偏在するこれらの文化的要素と社会システムの関係を学ぶことは、現代の経済、法制度、判例を理解する手がかりとなります。

学生へのメッセージ

学生の皆さんは、法と政策、公法と私法、法と文化を総合的に学ぶことで、公共政策を法的観点から評価・構成する方法を身につけることができます。法学的知見は、公務員試験等ご自身のキャリア形成に役立てていただくことはもとより、実務先行で展開する官民連携事業などの実践的な事例を理解し、法と政策の構築・評価の手がかりを深く学ぶてがかりとすることができます。